InAlAs/AlGaAs量子ドットの核スピン制御
私が初めて分子線エピタキシー装置(MBE)を使って成長した半導体量子ドットの試料が, 意外とよく発光したので(ビギナーズラック?), 調子に乗って単一量子ドット分光まで行いました(富士通研の宋さん, 中田さん, 廣瀬さんありがとうございました). 磁気光学測定をしていたところ, 核スピン分極形成過程における双安定現象を偶然に観測!(多分タマタマ観測したなんて言ってはいけないのでしょうね) 海外の動向も全くサーベイしていなかったので, 測定中はある意味萌えました. この研究に関連してQD2008のプロシーディングの表紙, 日本物理学会誌の表紙を飾ることができました.
インジウムフラッシュ法によるInAs/(Al)GaAs量子ドットの発光波長制御
新しいMBEの立ち上げを行い, 成長条件出しをしていたところでいただいたヒントをもとに, 発光波長を制御しました. 後になって考えれば, 当たり前なのだけれど狙いどうりに変化して行く様子を観測するのは楽しいものです. 更にこれらを組み合わせて結合量子ドットの作製を試みていたところ, 上層のQD形成時にSK transitionが予想より早く生じていることから, インジュウムのフラッシングが不完全だとGaAsキャップ層成長中にヘンセキしてくることがはっきり見て取れました. 早朝からクリーンルームで成長, 夕方取り出し, フォトルミ(PL)測定用のクライオに入れて真空引き&冷却, その間に翌日成長用の基板セットと真空引き, 丑三つ時にPL評価—>朝のサイクルを繰り返しました. この子(サンプル)たちの作製に関して今になって思えば, 私もずいぶん若かったなぁと(当時技官だった鳥海さんの「明日成長するのか?」の問いに, 勢いで「ハイ!」と元気よく答えていました(笑). 早朝からお付き合いいただき本当にありがとうございました. 技術者魂いつまでも忘れません).
ナノワイヤー量子ドットの励起子スピン緩和
1本のInPナノワイワーに挟み込まれたInAs量子ドットを舞台に励起子スピン緩和の横(位相)緩和と縦(偏光)緩和に 関する議論をまとめたもの. 位相緩和は1次の光子相関信号から, 偏光緩和は全偏光測定により同定されたランダム偏光成分の大きさから求めることができた. 所謂久保理論による位相緩和時間の変化と, ミュラー計算によるストークスベクトルの同定が非常に楽しかった. 偏光緩和はどうやらBAP過程が効いているようで, 大変勉強になりました. ZBとWZが局所的に混じっていたりと興味深く, 更に良く光ってくれた(実験家としてはこれが最も重要なのだが)のでまだまだ測定を行おうと思っていたのだが, ある朝サンプルをクライオスタットにセットして試料表面をみると, 見かけないキズが…..顕微鏡で拡大するとナノワイヤーがゴッソリと削られており……合掌. 犯人はあえて詮索しないこととしました. 教訓!: 人を簡単に信用してはいけない
三重結合量子ドット系による量子論理ゲート
学生時代、指導教官から「量子ドットを使った量子ゲートを何でもいいから考えてみて」と与えられたテーマでした. 乏しい知識と, 怖さ物知らずの結果, オリジナルなゲート動作のデザインが出来上がった. 当時量子情報・演算に関する本は皆無だった故, 教科書に載っていないことを考えることの楽しさを知ることができた(大学受験時代の大数をやっていたこともあり, 考えること自体の楽しさは知っていたのだが, 遥かに面白かった). あぁこれが「研究」というものなのかぁと当時は思っていました(今でも信じたいですが). 実験系?理論系?と聞かれることがあったが, 私は「デザイン系を研究しています」なんてカッコいいこと言ってました.